【感想】深夜特急3 -インド・ネパール-

前回、『深夜特急2 -マレー半島・シンガポール-』の感想をまとめました。

今回は『深夜特急3 -インド・ネパール-』を読んだので感想をまとめようと思います。

『深夜特急3 -インド・ネパール-』は、やっとインドに到着し、インドに翻弄され、インドを楽しみ、やっぱりインドに翻弄される話です。

以下は目次です。

  • 第七章 神の子らの家(インドⅠ)
  • 第八章 雨が私を眠らせる(カトマンズからの手紙)
  • 第九章 死の臭い(インドⅡ)

インドはこれまでの道中で立ち寄った他の国と比べても、ぶっ飛んでて刺激的な国だと感じた。

  • 売春婦の少女たち
  • 物乞いの老人
  • 料理にたかるハエ

これまでの長旅で奇跡的に体調を崩すことはなかったが、ついに無理がたたり体調を崩してしまう。

誰も知り合いがいなく頼れる人がいない、どこに病院があるのかもわからない。

そんな状況で旅人はどう対応したのか気になっていたので、その一例を知ることができてよかった。

よーじ
よーじ

私もインドを一度は経験しておきたい

第七章 神の子らの家(インドⅠ)

『深夜特急3』では、ついにインドに到着した。

元々、バンコク~デリー行きの飛行機を予約していたが、いきなりインド北部に位置するデリーに向かうのはもったいないと思った著者は、インド東部に位置するカルカッタ行きの飛行機に変更できないか航空会社と交渉した。

つたない英語で説明し相手を無理やりにでも納得させる姿勢には図々しさも感じたが、海外ではそれくらいの気持ちが大切なのかもしれないと思った。

インドでのエピソードは強烈な話が多かったので、いくつか引用しようと思う。

1つ目はインドに何度も訪れている青年に連れられて訪れた売春宿についての光景です。

私たちの顔を見て、親父は戸惑ったような表情になったが、ダッカ行きの若者が流暢なベンガル語を話しだすと、すぐに了解したらしく、奥の部屋から女を連れてきた。私はその三人の女を見た瞬間、喉元に吐き気のようなものがこみあげてくるのを覚えた。

彼女たちが醜かったのではない。その顔と体が異様なほどアンバランスだったのだ。背丈は私たちの胸ほどもない。小柄というのとも違う。まだ充分に発育しきっていないのだ。顔だけから判断すれば十台の、それもなったばかりの年齢に見える。毒々しい化粧はしているが、その下の素顔には幼女のあどけなさが残っている。ところが、首から下の体は四十すぎの中年女のように熟し、ほとんど崩れかかっている。なによりも異様だったのは、その臀部だった。青やピンクのサリーをまとっているが、腰から尻にかけてが体全体のバランスを失するくらいに膨らんでいるのがわかるのだ。異常に発達している。そのアンバランスさが、内部の臭いとあいまって、私に吐き気を催させたらしい。

深夜特急3 より引用

2つ目は飲食店で出会った老人の物乞いとのエピソードです。

昨日の夜、ビールを吞んでの帰り道で、突然足を掴まれて息を吞んだ。物乞いであることは明らかだった。金を渡さないかぎり、おとなしく手を放すとは思えなかった。力をこめて蹴れば、振り払えないことはなさそうだった。しかし、地面に這いつくばっている老人にそのようなことをするのは許されないように思えた。

私のその気持ちの動きが手に取るようにわかるらしく、ダッカ行きの若者は微かに笑いながら、「どうする?」といった。

深夜特急3 より引用

最後は蠅がたかる中での食事シーンです。

頭上には蠅の大群がいて、テーブルの上の皿にたかってくる。手で払っても払ってもきりがない。医大生は神経質に追い払っていたが、私は途中で諦めた。中国式に蠅のたかるものはうまいものと思うことにしたわけではなく、これほどしつこい蠅たちが調理場でこの皿だけを見逃してくれたはずはないと気がついたからだ。ここで追い払ってもすでに遅い。周りを見渡すと、蠅などにかかずり合っている客など誰もいない。どうやらインドでは、この種の達観が生きていくうえでどうしても必要なのか知れなかった。

深夜特急3 より引用

特に印象に残ったインドでのエピソードを紹介しました。

もちろん、インドでの楽しいエピソードも書かれているので、面白そうだし行ってみたくなります。

ただ、目をそむけたくなるような現実に関しても書かれています。

多分、これらのエピソードは現実に起こっているインドでは普通の出来事なんだと思います。

インドに行った人は、「インドが大好きになる人」か「インドなんて二度と行くかとなる人」の2つに分かれるらしいとよく目にします。

私はインドが楽しそうに思うけど、実際に行ってみたらどう感じるのか経験してみたいなと思っています。

よーじ
よーじ

一度くらいは経験してみたい

第八章 雨が私を眠らせる(カトマンズからの手紙)

インドで仲良くなった友人を訪ねに、ネパールのカトマンズへ行く話です。

アメリカやヨーロッパからのヒッピーたちにとって、カトマンズはモロッコのマラケシュやインドのゴアと並ぶ三大聖地のひとつなのです。とりわけカトマンズは、西からの旅人にとっては地の果て、行き止まり、という印象があるため、ユーラシア巡礼の最後にして最大の目的地になっているようなところがあります。

深夜特急3 より引用

カトマンズはヒッピーにとって有名な土地で、物価が安く、食べ物の種類が豊富で金のない旅人にとってうってつけの土地だそうです。

標高1,400mに位置し「天空都市」の別名があり、ヒマラヤ登山の玄関口としても知られます。

一見よさそうな場所に見えますが、著者は雨期に入国してしまい、滞在中のほとんどを雨の中過ごしました。

住む場所も食うことも問題ないが、雨で外出することも少なく、やれることは集まったヒッピーたちと雑談し、ハシシを吸い、腹が減ったら飯を食って、寝たくなったら寝る生活が続きます。

カトマンズでの最後の方には軽く鬱になったような描写が書かれている。

このままカトマンズにいると、いつかは僕も地震に対するアッサンシンになってしまうのではないか、という恐怖に襲われます。しかし、自分の部屋に戻ってベッドに横たわり、ひとりで夢と現の間をさまよいはじめると、恐怖感は薄い膜に覆われ、もうどうなってもかまいはしない、といった朦朧たる気分になってくるのです…。

眠くなってきました。

雨はまだ降り続いています。

深夜特急3 より引用

私もこの記事を書いている今は似たような生活を送っています。

仕事を辞めるので、溜まった有休を消化している最中です。

語学留学へ向けてオンライン英会話をやったり、図書館で借りた本を読んだり、YouTubeで動画を見たり、夕暮れ時に散歩する日々が2週間ほど続いています。

何かしらはしているが、何か物足りなさを感じている日々です。

本当は何もしたくないけど、何もしていないのは不安になるから、午前中だけはやることをやるルールを設けて自分を律するようにしています。

そんな生活で気づいたことは、無理にでも体を動かした方がいいということです。

椅子に座っているか、ベッドで横になっていることが多かったため、体力が有り余っているので、寝つきが悪くなってきた気がします。

夜に寝れないと意味もなくYouTubeを垂れ流し、勉強になるわけでもなく、面白いわけでもないが見てしまいます。

そんな無意味な人生を送っている自分に嫌悪感を感じていました。

真夏日の真昼間から散歩をするのはしんどいから、夕暮れ時に散歩を習慣づけるようにしてからは寝れるようになってきました。

意味もなく1,2時間歩いているとさすがに疲れてよく寝れます。

気持ちよく寝れると次の日の寝起きが良くて、少しくらい頑張ろうという気持ちが湧いてくるので、最近はいいサイクルに入った気がします。

もしかしたら著者は雨のカトマンズで外を出歩けず、運動量が減っていたのかもしれません。

体を動かすことは肉体的にはもちろんですが、精神的にもいいことがあると実感しました。

よーじ
よーじ

無心になって散歩、いいですよ

第九章 死の臭い(インドⅡ)

第九章ではインドでの死との付き合い方について書かれています。

インドでは死体を火葬するかガンジス河へ水葬するらしい。

インドでは、同じ死者でもチフスとか天然痘といった疫病にかかったり、殺されたり自動車にはねられたりといった不慮の事故に遭って死んだ場合、天寿を全うできなかったという理由で、火に焼かれることなくそのまま水に流される、という話を聞いたことがある。

深夜特急3 より引用

水葬は死者に重りをつけてガンジス河に沈めるのですが、長い時間の中で縄が劣化し、腐敗した死体が浮かび上がってくることがあります。

その死体を鳥たちがついばんでいる。

死体焼場を眺めると、火力が足りず骨だけにならなかった焦げた死体が海に放り投げられる。

その黒い塊も鳥たちはついばんでいる。

そんな光景を著者は一日中眺めていました。

その時の描写が不思議な気持ちになったので引用しようと思います。

牛はうつろき、鳥が飛びかい、その間にも、焼かれ、流され、一体ずつ死体が処理されていく。無数の死に取り囲まれているうちに、しだいに私の頭の中は真っ白になり、体の中が空っぽになっていくように感じられてくる…。

深夜特急3 より引用

不思議な感覚だろうなと思いました。

インドは人口も多く、多くの子供が生まれ一方、発展途上の関係上、多くの人が病気や事故で死ぬ数の多いのだと思います。

人が死ぬことは当たり前にある環境、死体は鳥たちがついばんでいる光景を目の当たりにして、これが世界の形の一つなのだろうと思えました。

日本という安全な環境で生活していると、死は遠い存在のように感じます。

もちろん今ある安全な環境は、過去の人たちが望み行動してきたから現在の環境になったのだと思うし、その環境で生きていけることはとてもありがたいことです。

これからも日本は安全な環境であってほしいと思う一方、一度くらいは安全な環境を捨て、いろんな国を訪れ、様々な経験をしておきたいと思っている自分もいます。

死とはなんだろう、生きるとはなんだろう、と考えるいいきっかけになる気がするし、色々考えた結果、死ぬときに後悔の少なくなればいいなと思っています。

よーじ
よーじ

今の環境に生きていのはありがたいことだと思う

【まとめ】インドの光と闇の一部がわかった

今回は『深夜特急3 -インド・ネパール-』の感想をまとめました。

ネパールのカトマンズでのエピソードは20ページ程度だったので、ほとんどがインドでのエピソードでした。

インドの情報は動画やブログで色々見ていましたが、改めてインドのいい面、悪い面を知ることができました。

そして、実際に行ってみると違った感想が湧いてくるのだろうと思います。

インドでのエピソード終盤、著者が体調を崩した描写で話が終わります。

宿に帰り、薬を飲んで横になったが、熱と頭痛で眠ることもできない。電気を消してじっとしていると血液が心臓から送り込まれるたびに脳髄を鈍器で殴られるような痛みを覚える。だが、電気をつけ、呻き声を漏らさぬように苦痛に耐えていると、熱に潤んだ眼に壁の染みが異様な形に変化していく。それが蠢き、揺れ、散り、膨らみ、這い廻り、襲い掛かってくるような気がするのだ。

深夜特急3 より引用

これまで道中では体調を崩さなかったが、これまでの疲れがインドの地で爆発したかのような症状です。

知り合いが誰もいない環境、誰を頼っていいのかもわからない状況で、著者はどう対処するのでしょうか?

「旅で病気になったらどうするのだろう?」と気になっていたので、めちゃくちゃ興味があります。

これまで読んできた沢木耕太郎さんの本をまとめました。

興味があれば読んでみてください。

よーじ
よーじ

最後まで読んでくれてありがとう

今回紹介した商品

・深夜特急3 -インド・ネパール-

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